企画要旨
『景観開花。』は、土木デザインに関心のある若者へその力を試せる場を提供するとともに、 多くの人々へ向けて土木デザインの可能性を示すための設計競技イベントである。
高度経済成長期の日本では早急な社会基盤整備が求められ、特定の機能を果たすためだけ の画一的な土木施設が多く生み出された。しかし一定の社会基盤が整うにつれ、その場所が 持つ意味や役割に合い、風景に調和した土木デザインを求める機運が高まりつつある。そう いった土木デザインが美しい景観を実現するものと信じ、『景観開花。』は誕生した。
そして『景観開花。』は本年度で 13 回を数える。土木デザインの隆盛による国土景観の 「開花」を願い誕生してから年を経るにつれ、少子高齢化に代表される社会情勢の変化は いっそう顕在化し、我々は生活のあり方そのものの再考に直面している。土木施設はその役 目を全うする長い期間にわたって、常に人の生活と密接に関わる。したがっていま、土木の あり方もまた問い直されているといえるだろう。それを踏まえ、近年は土木と生活の接点と して「まち」に重点を置いた設計競技を実施してきた。
今年度の『景観開花。』もこれを継承し、「まち」の理想に対する土木のあり方を問う。 応募者には生活と土木の接点「まち」の理想の未来像について各自の思いを巡らせ、それを 実現する土木デザインの提案を求める。世代を越えて存在し続ける土木をつくる視点から、 美しい景観と新たな生活を統合するデザインの提案が生まれることを期待している。
平成28年7月29日
景観開花。実行委員会
設計テーマ
相互作用
(詳細は募集要項をご覧ください。)
審査方法
一次審査会を行い、審査委員は入賞作品(5点前後)を決定する。後日、公開最終審査会を開催し、入賞者のプレゼンテーションとそれに対する質疑応答の内容から、審査委員は上位2点と佳作数点を選出する。その後、上位2点の制作者は最終ディスカッションに進出し、相互に質疑応答を行う。この際、質疑には佳作受賞者の参加も可能とする。審査委員は以上を踏まえ、上位2点から最優秀賞と優秀賞を決定し、講評を行う。
審査日程
エントリー受付開始 | 平成28年7月29日(金) |
エントリー締め切り | 平成28年 |
一次審査提出物締め切り | 平成28年 |
一次審査会 | 平成28年11月9日(水) |
最終審査提出物締め切り | 平成28年12月5日(月) |
公開最終審査会 | 平成28年12月17日(土) |
賞金額
最優秀賞 | 1点 | 20万円 |
優秀賞 | 1点 | 10万円 |
佳作 | 数点 | 4万円 |
特別協賛企業賞 | 数点 | 2万円 |
参加賞 | 全作品 | 審査委員からのコメント |
審査委員紹介
篠原 修
Osamu SHINOHARA
土木設計家
東京大学名誉教授
景観開花。2016 審査委員長
詳細
1945年生まれ。
政策研究大学院大学名誉教授・客員教授
エンジニア・アーキテクト協会 会長
GSデザイン会議 代表
(景観開花。審査委員長:2004年〜)
主な受賞歴
2010年 | 土木学会デザイン賞 最優秀賞(新豊橋) |
2009年 | 鉄道建築協会賞停車場建築賞(JR四国・高知駅) |
2008年 | ブルネル賞(JR九州・日向市駅) |
2008年 | 土木学会デザイン賞 最優秀賞(苫田ダム空間のトータルデザイン) |
2004年 | グッドデザイン賞 金賞(長崎水辺の森公園) |
ほか |
主な著書
内藤廣と東大景観研の十五年(鹿島出版会、2013年)ピカソを超える者は―評伝 鈴木忠義と景観工学の誕生(技報堂出版、2008年)
景観用語事典 増補改訂版(彰国社、2007年)
土木デザイン論(東京大学出版会、2003年)
ほか
関連するページ
エンジニア・アーキテクト協会 メンバー紹介政策研究大学院大学 教員・所属研究者情報
五十嵐 太郎
Taro IGARASHI
建築評論家
東北大学大学院教授
詳細
1967年生まれ。
せんだいスクール・オブ・デザイン教員
あいちトリエンナーレ2013 芸術監督
第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展 日本館コミッショナー
(景観開花。審査委員:2007年〜)
主な受賞歴
2014年 | 文化庁芸術選奨新人賞(あいちトリエンナーレ2013 揺れる大地) |
ほか |
主な著書
日本建築入門ー近代と伝統(筑摩書房、2016年)レム・コールハースは何を変えたのか(鹿島出版会、2014年)
窓と建築の格言学(フィルムアート社、2014年)
おかしな建築の歴史(エクスナレッジ、2013年)
〈建築〉という基体―デミウルゴモルフィスム 磯崎新建築論集 第4巻(岩波出版、2013年)
建築学生のハローワーク 改訂増補版(彰国社、2012年) ほか
関連するページ
五十嵐太郎 研究室木下 斉
Hitoshi KINOSHITA
まちビジネス投資家/事業家
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事
詳細
1982年生まれ。
一般社団法人公民連携事業機構 理事
熊本城東マネジメント株式会社 代表取締役
内閣官房地域活性化伝道師
(景観開花。審査委員:2014年〜)
主な著書
闘うまち方法論-自己成長なくして、地域再生なし-(学芸出版社、2016年)稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の法則(NHK出版新書、2015年)
PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた(共著、学芸出版社、2015年)
まちづくり:デッドライン(共著、日経BP、2013年)
まちづくりの「経営力」養成講座(学陽書房、2009年)
ほか
関連するページ
経営からの地域再生・都市再生一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス
西村 浩
Hiroshi NISHIMURA
建築家/デザイナー/クリエイティブディレクター
株式会社ワークヴィジョンズ 代表取締役
詳細
株式会社リノベリング 取締役
マチノシゴトバCOTOCO215 代表
(景観開花。審査委員:2005年, 2008年〜)
1967年佐賀県生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、1999年にワークヴィジョンズ一級建築士事務所を設立。
土木出身ながら建築の世界で独立し、現在は、都市再生戦略の立案からはじまり、建築・リノベーション・土木分野の企画・設計に加えて、まちづくりのディレクションからコワーキングスペースの運営までを意欲的に実践する。
日本建築学会賞(作品)、土木学会デザイン賞、BCS賞、ブルネル賞、アルカシア建築賞、公共建築賞 他多数受賞。2009年に竣工した、北海道岩見沢市の「岩見沢複合駅舎」は、2009年度グッドデザイン賞大賞を受賞。
関連するページ
株式会社 ワークヴィジョンズ長谷川 浩己
Hiroki HASEGAWA
ランドスケープ・アーキテクト
オンサイト計画設計事務所 代表取締役/パートナー
詳細
1958年生まれ。
武蔵野美術大学 特任教授
主な受賞歴
2015年 | JCDデザインアワード2015 銀賞(箱根山テラス) |
2014年 | BELCA賞(たまむすびテラス) |
2013年 | 土木学会デザイン賞2013 最優秀賞(ハルニレテラス) |
2011年 | グッドデザイン賞(立正大学熊谷キャンパス再整備) |
2009年 | グッドデザイン賞 特別賞(東雲CODAN) |
2007年 | アルカシア賞ゴールドメダル(星のや軽井沢) |
2003年 | 造園学会賞(群馬県立館林美術館ランドスケープ及び多々良沼公園) |
ほか |
主な著書
つくること、つくらないこと―町を面白くする11人の会話(学芸出版社、2012年)テキスト ランドスケープの歴史(学芸出版社、2010年)
ほか
関連するページ
オンサイト計画設計事務所武蔵野美術大学建築学科長谷川スタジオ
(敬称略/五十音順)
審査委員メッセージ
篠原 修 先生(審査委員長)
恩師、鈴木忠義はかつて、こう言った。「おまえ、いい公共事業かどうかはなんで分かるか、知ってるか」。コスト・ベネフィットだろうか、地元の子供達の笑顔だろうか、などと考えていると、こう言うのだった。 「いい公共事業なら民間が放っておかない。すぐ出て来るよ」。成る程、いい公園、いい街路を作ればレストランやカフェがその良さを利用しようと寄って来るのである。山下公園のニューグランドホテル、表参道のカフェ、ブランド店である。
五十嵐 太郎 先生
今年のテーマは相互作用ということですが、東日本大震災の被災地の現状を見て、いろいろ考えさせられることがあります。防潮堤にしても、かさ上げのためのマスタバにしても、圧倒的にマッシブなヴォリュームが立ち上がり、過去や環境との断絶を痛感する景観が出現しています。この現実が新しくまちに相互作用を起こすのか、それとも別の方法がありえたのか、そんなことに興味をもっています。
木下 斉 先生
縮小社会において土木分野にも要求されるのは、「稼ぐインフラ」です。 公共資産として税金で整備し、税金で維持するだけでなく、そのインフラそのものが「稼ぐ」ことが可能にことを意識しなくてはなりません。橋にしても、広場にしても、作るもののプレゼンだけでなく、作ったその先の運用方法において稼ぐ提案を具体的に行うプランに期待します。そのような計画こそ、今後の縮小社会でも土木が生き残っていく発想力であると考えます。当日を楽しみにしております。
西村 浩 先生
今年のテーマは「相互作用」。こんなことをテーマにしなければならない世の中かと思うと、改めてこれまでの教育の失敗を実感する。しかも、要項の中には「土木施設との連携」と書いてあるが、土木も土木だけで成り立つ訳がないのである。 まぁ、そうは言っても仕方が無い。そこからやり直しだ。日本は成熟社会に入り、社会資本ストックが余る時代になった。それでもひたすらモノを整備しようという慣性力が、変わりゆく価値観とのずれを大きくし続けている。景観やデザインを考える意義とは何なのか?そもそも、景観やデザインをよくすることが、今、必要なのか?今回のテーマは、モノづくりの根源に関わる問題である。ここに答えが見いだせなければ、土木の景観・デザイン分野の敗北だ。
長谷川 浩己 先生
土木系のデザインコンペということですが、あらゆる業態が溶け合いつつあることもまた自明のことであり、その意味では土木という概念の枠を押し広げるような案を期待しています。 私たちが作るものは全て、それら同士、またはすでにそこにあるものたちとの相互作用でしか存在できません。繋ぐものは何なのか?提案を見るのを楽しみにしています。
(五十音順)